プリデスティネーション
2015年2月28日日本公開
感想・総括
主人公は「時空警察」のエージェントであり、未来に発生する大事件を防ぐ為、ある時代に潜入し任務を遂行していて、彼には長らく追い続けてきた凶悪な爆弾魔がいるのだが、物語はその“最後の任務”の局面から始まって行きます。
その中で、主人公はバーテンダーとして働きながら、とある青年と出会い、この青年の人生が――あまりにも数奇で、普通の人生では絶対に起こり得ないレベルの“異常”さを孕んでいて、この長い“語り”のシーンが作品の太い幹になっています。
ここが退屈に見えてしまう可能性が十分にありますが、この映画で最も重要なのは「会話」「言葉」「表情」「テンポ」。この映画を理解する鍵が、ほぼ全てここに置かれている様に感じます。
後半に向かうほど退屈に感じた“一つ一つの言葉”が意味を変え始めてきます。この作りが本当に秀逸で、二回目に見た時、冒頭の会話ひとつが全く違う意味に捉える事ができます。“後で意味が変わる前提で書かれている脚本”と言えるのではないでしょうか?
タイムトラベル映画の多くはロジックが破綻しやすいし、矛盾が生じる作品も多々あると思います。だがこの映画は「敢えて破綻させていない」のではなく、「破綻そのものを作品のテーマとして扱っている」様に見えました。
これはSF好きなら震える構造でむしろSFに馴染みがなくてもこの映画のカラクリに驚く事になると思います。
イーサン・ホークの落ち着いた演技、青年の役者の表情の変化、視線の揺れ、会話の間――意味の反転に必要な“演技”が丁寧に積み上がってます。
97分という時間の密度は異常なほど濃すぎです。集中しないと置いていかれるが、集中して見たら絶対に伏線が回収できスカッとします。しっかりと集中させるための97分かもしれません。
タイムトラベルというもはや“鉄板”とも言える題材を扱いながら、ここまで真っ向からパラドックスを主題の中心に据え、しかも一本のストーリーとして最後まで破綻させずに走り切った作品はそう多くないと感じました。
97分という短さの中で、観客の予測を何度も裏切りながら、しかも「すべての伏線を回収する」形で終着させる緻密な構造になっています。初見時の驚きと“背筋が冷える感覚”は、ネタバレを知らずに見られた観客にのみ許される特権だと思います。
私は「タイムトラベル映画の一つの到達点」と呼んで良いと思います。衝撃と切なさが同時に来る感覚に鑑賞後は、誰かと“構造”について話したくなる衝動に駆られます。
何を喋ってもネタバレになりそうな気がします・・・そんな映画でした。
私は「シックス・センス」以来の衝撃を覚えました。もう一度記憶を無くした状態で観たい映画です。
私的関連作品
●「デイブレイカー」(2010年)
監督のスピエリッグ兄弟とイーサン・ホークのもう一つのタッグ作品
●「シックス・センス」(1999年)
記憶を消してもう一度観たい映画筆頭
●「インターステラー」(2014年)
難解に感じるが意味が分かると素晴らしいSF映画
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